過去の開発事例 ソフトクリームのディスプレイモデル制作
私共は仕事柄、商品の容器やケース・商品本体等にもプラスチックを使用する事が多く、当然プラスチック成型の金型屋さんや、その金型を使って形を作る成型屋さんとのお付き合いが数多くあります。
1枚の絵から
ある日、プラスチックの商社の営業の方から電話が入り、明日お邪魔したいとの事。
そして翌日持ってきた図面は、書きかけのような分けの分らないソフトクリームのような絵でした。
「これ、なに?」
「ソフトクリーム」フーン!
「で何?」「店の前に置くやつ!」フーン!
「それって店頭ディスプレイ?」「そう点灯ディスプレイ」
「電気つくんだ!」
形もはっきり決まっていないソフトクリームのような変則的な形ものは、モデルを作って客先に形状の確認を取らなければなりません。しかし、図面も無くイメージ優先の形状は、バランスを見ながら形状を整えていかなくてはならないため、どうしても人の手と目に頼らざるを得ません。もちろん完全な手作りです。
注意点は、ソフトクリーム製造メーカーの作るクリーム部分の形にあわせモデルを作る事と、コーン(ソフトクリームの下の持つ部分)の形にも指定があります
最初は半分で・・・
ソフトクリームのモデルサア!お仕事の始まりです!
「で、大きさはどのくらい?」
「エー、最初は半分で・・・」
「最初はって、2回も作るの?」
「お客さんのソフトクリーム部分の形がはっきりしていないし・・」
「マッいいか!じゃ適当にね!」
そんなこんなで、その他の細かい部分の打ち合わせを済まし、制作が始まります。
まず材料の発注です。最終の高さ(90センチ仕上がり)を考慮してブ厚いウレタンフォームを発注しました。
数日後、発注したウレタンフォームが届き作業開始です。ソフトクリーム全体のアウトライン部分だけの図面を引きます。その図面を圧紙に張り付けて切り抜きます。2枚作り、ウレタンフォームの上下に張り付けて、ヒートカッターと言って熱線の機械でだいたいの形状を切り抜きます。左右も同じように切り抜いて、そこからが技です。カッターで大雑把な形を作っていきます。部屋の中はウレタンフォームの切りくずでいっぱい!形を整えながらの作業です。失敗は許されません。丸みを帯びて、何となくソフトクリームにみえてきたら次は、大きなヤスリと粗いサンドペーパーで形を整えていきます。ソフトクリームの形になってきたら細かいサンドペーパーで仕上げます。ラフモデルの出来上がりです。商社の営業の方へ電話をし、お客様の所へ持っていってもらい、返事待ちです。
まちがえてOK!
ソフトクリームのディスプレイほぼOKをもらい、最終仕上サイズでのモデル作成です。
びっくりです。甘く見ていました。90センチの仕上リ、とても大きいです!前回と同じように作業は進めるのですが、高さが2倍と言う事は、容積は4倍、ウレタンフォームだらけになりながら格闘です。チョット気を緩めるとどこかにぶつかって傷はつくし、持つ手は疲れてくるし、簡単に書いてありますが、かなりの重労働です。見積りも甘かった事に後から気が付きました。
でもなんとか仕上げ、営業の方に連絡を入れます。
モデルを取りに来た営業の方は違う意味で驚いています!
「コレ、原物大・・・・?」
何とこちらの思い違いだったようです。最初のラフモデルの大きさで仕上げれば良かったようです。
「マッいいか!迫力もあって解り易いから・・・」
持っていってもらいました。
電話が入りました。成功です。インパクトの強さでOKが出ました!営業の方も驚いて・喜んでいます。いつもはなかなか決まらないお客さんだそうです。

今度は金型屋さんが一緒に来社されました。大きな商品モデルと一緒です。抜き勾配のチェックの始まりです。(ちなみに金型の場合は、2つに割って作るので中側の成型したプラスチックが型に引っ掛からないように、少し勾配をつけるのです。)金型に問題がないのを確認し終了です。すると、ナッなんと、クリーム部分だけもう一つ作ってほしいとの事。「なんで?」このモデルはお客様の所に渡すのだそうです。「やっと終ったと思ったのに!」仕方がありません。お仕事です。

もう1個作って!って・・・
なんか時間が逆戻りしたような、「これじゃ、先週とやってる事が全く同じ!」などと思いながらウレタンフォームに埋もれてモデルづくリです。まだ救われたのは、コーンの部分は変則的ではないから作らなくても良かった事です。
できました!これでこちらの仕事は終了です。金型屋さんはこのデザインモデルをマスターモデルとして直接金型をおこすと言って持っていかれました。「大丈夫かな?」
1カ月後、商社の営業の方がなんとプラスチックでできたソフトクリームを持ってやって来ました。「どう!いいでしょう!」うれしいやら、苦しさを思い出すやらで不思議な気分です。でも一安心!これにて一つの仕事が終了です。

最近では街のあちらこちら見かけます・・・・・