当時、ホテルや温泉旅館のお風呂にボディソープは置いてありませんでした。
当社は創業50余年の歴史を持つ洗剤メーカーより、パッケージのデザインやパンフレットのデザインといった仕事を頂いておりました。お客さまは、訪問販売のパイオニアで、「洗濯用粉石鹸」を全国ネットで販売していました。しかし、洗剤業界の競争激化により「洗濯用粉石鹸」での利益確保が困難となり、新しい市場に向けた新商品の開発が急務となりました。
液体せっけんボディソープ容器の誕生
新商品として最初に発売したのが「海草ボディソープ」です。自然派志向を全面に打ち出した商品でしたが、比較的オーソドックスな容器形状と、自然派志向が時期尚早なのでしょうか?マーケットには受け入れられませんでした。
次に創る事となった商品が「アロエボディソープ」です。当時は大手メーカーがシャワーソープ・ボディシャンプーなどの名称で液体せっけんを商品化していましたが、まだまだ市場には浸透していませんでした。しかし、お客さまの会社はアロエを全面的に打ち出し、他社との差別化を図ることと、「アロエボディソープ」の新しい商品名で発売する事が決まりました。
「アロエボディソープ」ボトルデザイン
いよいよ出番です。容器はどうするのか?
今までにない新しい容器、1リットル以上入る容器、そんな容器などありません。
業務用ならいざしらず、ポンプを付けるとなるとそれなりの格好をしていなければなりません。当時は他のメーカーでもそんなバカデカイ容器で販売している会社はありませんでした。
色々な容器を集めたり、店頭やボトルのメーカーなどあちこち見て廻りましたが、そんな容器は何処にもありませんでした。
やはりオリジナル容器を作るしかないようです。
デザインに取りかかります。
使い勝手を考え、”背は低く、安定した形”です。
イメージスケッチをどんどん描いてきます。その中から何枚かを選び、それを基に再度形状を検討します。
そして最後に残った数枚の中から1点を選びモデルづくりです。
今回は粘土で形状を作る事にしました。ウレタンフォームを削って基型を作ります。これに粘土を盛り付けて形状を整えます。何度もこの作業をくり返し、大きいけどちょっとかわいい”おむすび形容器の誕生”です。お客さまの会社に持っていきます。
これがまた不思議、社長に見せると「良しこれで行こう!」二つ返事で容器が決定しました。
今度は、金型屋さんとブローの成型屋さんを集め、「この容器を作りたい!」
金型屋さんとブローの成型屋さんは、ヒックリ返りそうです。金型屋さんはまだ大丈夫との事ですが、成型屋さんは反発しています。「パリソンが・・成型条件が・・」など色々意見がでました。今までの容器は、作りやすさや仕上リの良さを前提にして形状を決めていたため、それらを無視した形には批判的でした。そこをなんとか押さえ込んでというか、丸め込んで製造予定が決められていきます。
ボトルカラーとラベルデザイン
今度は容器色の問題です。
簡単でした。アロエだからミドリ。当たり前です。
でもデザイナーには簡単ではありません!緑といっても無数にあります。
プラスチックの容器で出せる色と出せない色、中の液体の色によっても容器の色が少しは変わってきます。
プラスチックのカラーサンプルを見たり、こちらからも色の提示を何度となくして、やっと出来上がりました。
感激もつかの間、ラベルとパッケージが残っています。容器の形に合わせラベルの形は決めてはありますが、ラベルの上の空いたスペースをどうしよう?何かいります。
シンボルマークです。アロエの形をモチーフにシンボルっぽいデザインをしました。
ネーミングはもちろん「アロエボディーソープ」です。
次はパッケージです。色々なパッケージを考えました。アロエの柄入り、パターンぽいものなど、どれもピンと来ません。社長に見せましたその中の一つ「濃い緑のベタ」お気に入りです。こんな形で話は進みアロエボディソープが誕生しました。
一つ大切な事を言い忘れていました。ラベルのために作ったシンボルマークですが・・・今は会社のシンボルとしてビルの屋上やパンフレットその他のアロエシリーズに全て使われています。そんなつもりじゃなかったので、あまりお金をもらってません・・・。
ボディソープ温泉旅館で販売
デザイン作業と同時平行で販売戦略を練っています。
百戦錬磨・出たとこ勝負の営業マン達が会社を支えています。
「ボディソープかぁ・・・・・泡、良く立つなぁ」風俗店にでも持っていくか?
「信じられません!」ホントゥに持っていって、売ってきた営業もいました。
「容器がデカイから温泉の大浴場へでも置いてもらうか?」そうです!これが正解でした。
価格が高いから最初はなかなか使ってもらえません。
そこを営業努力というか技です。
「固形石鹸に比べ清潔です!」
「石鹸カスが出ないので掃除が簡単です!」
「泡立ちが全く違います!」
「お客様に喜んでいただけます!」
やはりすごいです。営業です。
「お土産品として販売してください!」びっくりです!商魂たくましいと言うか・・・でももっと驚いたのが、お土産品として無茶苦茶売れ出したのです。
もちろん予測していたのですが・・・?(社長の言葉でした。)
くる日もくる日もファックスの山です。温泉旅館からの問い合せや、旅行社などからも引き合いが来ます。恐くなってきました。
温泉土産でボディソープが売れるなんて?
今まで1,000円から1,500円位がお土産の価格の主流だったはずです。
アロエボディソープは3,000円です。当然、旅館も儲かりました。
私事ですが、ある日親戚のおばあちゃんが、友達と温泉旅行に行きお土産を買ってきてくれました。涙が出ました「アロエのボディソープ」だったのです。
こんな形で販売は伸び続け、単一商品では日本一、全国各地の温泉旅館では必ず目にするようになりました。
社長いわく、「予想通り!」
その後、ボディソープの容器は持ち運び、詰め替えやすさ等を考慮して改良がくり返され、現在に至っています。
ヒット商品の影の在庫一掃「新商品」
ボディソープが売れ始め、固形石鹸の在庫が発生しました。ボディソープは固形石鹸より利点が多いと言う事でで販売している以上、今さら固形石鹸を売り込む訳にはいきません。しかし、ボディソープを作る前は固形石鹸を売っていたので、在庫があるのは当たり前です。
またもお呼びです!「これを何とかして売れないか?」
「無茶です。ボディソープの足を引っ張りかねませんよ!」
「そんな事は知っている!」
「だから呼んだんじゃないか!」ありがとうございます。
お仕事です!考えました。
「ボディソープを好きじゃない人もいる。固形石鹸でなきゃ気がすまない人に売ろう?」
「全く別の商品としては?」決まりました。パッケージの変更です。
今までのオーソドックスな単品箱から、ボディーソープに相乗りしたお土産屋さんで売りやすいインパクトの強いデザインです。
その固形石鹸もアロエ成分を配合していたため、緑色の紙で包んで上の部分をハサミでザクザクと切ってヒモで縛りました。アロエの形のパッケージの出来上がりです。なかなか強力です。
これにラベルを貼って出来上がり。
お客様の所に持っていきました。
受けました。
製造開始です。印刷屋さんから電話が入りました。「上のギザギザ部分の指示をください」適当に作ってくださいと言うと「できません」と叱られました。
ギザギザ部分の図を書き起こし、印刷屋さんに渡しました。これが意外に大変でした。
ボディソープの横に並べて販売です。これがまたよく売れるのです。アッという間に在庫は無くなりました。非常に喜んでいただけました。あまり売れるので、固形石鹸の増産製造です。在庫処理のはずが・・・・・これも商売です。